[イーノ#2] 金沢のOblique Strategies
あっという間に正月休みは終わってしまいました。みなさんのお休みはいかがでしたか?僕は仕事とテレビと温泉の一週間でした w
あるテレビ番組をみていて、非常に驚いたことがひとつありました。それは、なにを隠そう鏡餅の色についてなんですが、僕はいままでずっと鏡餅というのは紅白 ー 上が赤で下が白ーだと思いこんでいました。実はそれって金沢だけだったんですね。知らなかった…
もうひとつ金沢のお正月の風習として、「辻占」という食べ物?があります(Wikipediaの辻占の項でも金沢の風習として紹介されてました!)。
去年だったか一昨年だったか、以前にもブログで紹介しましたが、要するにフォーチュンクッキーのようなものです(これまたWikipediaによるとフォーチュンクッキー自体、辻占に由来するものだそうです!中国のものではないんですね)。カラフルな砂糖菓子の中に「ひとこと占い」が入っているだけなのですが、これを食べると新年が来たことを実感するから不思議です。
肝心の内容ですが、「金運が上向く」といった一般的な占いの場合は少なく、たいていはすごく曖昧な言葉か、艶っぽい言葉(「おまえとならば」とか)であることが多いです(子供のときはよく意味がわかりませんでしたが…笑)どこのお店の辻占かにもよるのですが、全般的に不思議で思わせぶりな言葉が書いてあるんですよね。
そう、まさにBrian EnoのOblique Strategiesのように。
Oblique Strategiesはイーノが友人のアーティストと共同で制作したカードゲーム、というかツールです。トランプのようなカード一枚一枚に、ちょっとした警句が書かれています。警句には、「決断を先延ばしにせよ」「めいっぱいわがままに振る舞え」といった、社会通念や常識に逆行するものも多く含まれているのが特徴です。自分の考え方のパターンを崩し、新しいアイデアの気づきを与える意図があります。
制作中などでアイデアにつまったときに、カードをランダムに一枚引いて、書かれていることと自分の状況を照らしあわせて打開策を探る、というのがイーノが考えた使い方でした。このカードのセットは、イーノのオンラインストアから今でも購入できます。もっと手軽に試してみたい人のために、無料のiPhoneアプリケーション版もあります!画面をタップするたびに、新しいカードが表示されるだけの単純なアプリケーションですが、初版から最新版まで、これまでにリリースされた版をすべて収録しているようです。
今年、最初に引いたOblique Strategy。汚れた食器がたまってること、ばれてました!?
こちらはイーノのインタビュー。後半には執刀中にOblique Strategiesを使う外科医(!?)の話が出てきます。「決断を先延ばしにせよ」なんてカードがでなくてよかった!
「考え方のパターンをいかに崩すか」
「自分の思考・嗜好の限界をいかに越えるか」
それは彼の音楽プロデュースにおいても大きなテーマであるようです。たとえば、何度も紹介しているKevin Kellyによるインタビューの中でも、
スタジオで音楽を考えているプレイヤーには我慢ができない。
プレイヤーは「音楽らしく」聴かせるすべを体得している。「音楽らしく」響くだけの曲からは新しいものは生まれない。音楽をいかに忘れさせるか、その手伝いをするのが自分の役目だ。
といった趣旨の発言をしています。さらに、自ら考案したロールプレイングゲームを、Oblique Strategiesと併用することで、プレイヤーが「手ぐせ」で弾くことを防いで、新しいフレーズにチャレンジさせるといった話もでてきてます。
(ここでは紹介しませんが、ロールプレイの内容がとても奇妙でおもしろいので、ぜひ原文にあたってください)
たまたま最近見たIDEOのCEO, Tim Brownのプレゼンテーションでも、「ロールプレイ」の効能が語られていました。
お決まりの思考パターンを打破して新しいアイデアを得るための「システム」として、「ロールプレイ」や「プロトタイプ」を行うことの重要性をデモをまじえて強調しています。
ぼくがこうしたイーノの取り組みに強い興味を覚えるひとつの理由は、自分の博士論文のテーマがまさにこの「Oblique Strategies」のStrategyを実現するために、ソフトウェアはどうあるべきか、というものだったからです。「気づき」を支援するためのソフトウェアを、アルゴリズムとインタラクションの両面からデザインしました。そのひとつの成果がSONASPHEREだったわけです。それから時間が経過し、SONASPHEREよりも見た目にかっこいい・fancyなシステムはたくさんでていますが、僕がSONASPHEREで問いたかった問題意識は今も鮮度を保っていると思っています。
元旦は、自分の生活を見直して「今年こそは」と一年の目標や誓いを立てる日です。新しい年を迎えて引き締まる思いのする元旦の朝に食べる辻占は、「そんなに力まずちょっと力を抜いてみようよ! 」「見方を変えてみたら?」という、昔の人の知恵なのかもしれませんね。
肝心の僕の今年の辻占は…
ひとつめは
「流れにまかせなさい」
これはサーフィンを頑張れということかな(笑) 今年はウォーキングとカットバックがきちんとできるようになりたいです。hang 10を一度でも決められるといいなぁ。
さぁ練習だー、海に入るぞ!という前に…. 今、書いている原稿を仕上げないといけない!
そこで、もう一つの辻占。
「あと二日待ちなさい」
こちらは編集者のKさんとOさんに捧げます!(すいません。がんばって書きます… 汗)
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