[日誌] Pan Sonic + ATAK

Pan SonicとATAKの日本ツアーにあわせてのトークショーに行ってきました。通訳を通してのコミュニケーションということもあってか、議論が白熱するという感じではなかったのですが、その中で特に、「Pan Sonicがコンピュータを使わない理由」として、メンバーの一人Mika Vainioが、グラフィカルインタフェースの危うさを挙げたことに興味を引かれました。

音楽ソフトウェアを使うことで音楽の構成が可視化される、それによって制作の方向性が視覚情報に何らかの形で「しばられてしまう」(本人はConnectedと言っていた)恐れがあるというわけです。これは僕も常日頃感じていることで、MPCのようなシーケンスがきっちり見えないハードウェアで制作するのと、Logicでループを切り貼りするのでは、自然とできあがってくる音楽が変わってきます。Logicの方が細かいエディットができるのにも関わらず、勢いという点ではMPCで作ったものにかなわなかったりするから不思議です。

一方で、レーベルATAKを主宰する渋谷慶一郎さんは、べリーデジタル(佐々木さんの表現)な手法で、ほぼコンピュータで楽曲を作っているそうです。最近は東大の池上先生と一緒にリズムとトーンのいずれでもない新しい要素を取り入れた音楽として「第三項音楽」というアイデアを提唱されてます。さらにカオスや複雑系の考え方を取り入れた新しい音響合成を実現し、実際のアルバム制作に利用したとか。先日の未踏ソフトウェアの発表会でその一部を聞く機会があったが、たしかに特徴的ないい音がでてました。ただ、カオスとかゆらぎとかいいつつも、最終的には通常のDAWソフトウェア上で線形な楽曲を恣意的に構成している点に違和感を覚えます。音色にはある程度の不定性を許容しつつ、構成は作者がかっちりと決める…. 五線譜の音楽をバックグラウンドにもつ渋谷さんならではの割り切り方なのか…

ビジュアルアート出身のIlpo Väisänen(Pan Sonic)がビジュアルのインタフェースを「音楽の幅を狭める」として毛嫌いしているのに対して、音楽畑の渋谷さんが視覚的な情報に基づいて音楽を制作しているという逆転が面白いと思いながらトークを拝聴しました。

明日のUNITのライブにも行くつもりです。久々のPan Sonicのライブ、楽しみです。

8 Comments

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kznr1116
February 23, 2007 at 3:47 am

こんばんわ。毎度面白い事書かれますね。 もはやフィードを楽しみにしてます。 おみずとりからナノコンピュータ設計まで、 すべからく可視化が不十分な作業というのはプロセス指向になる傾向があるように思います。。 デザインの対象(デザインする意識が向かう相手?)がresultなのかprocessなのかで決定されるメタ属性的ななにかって感じませんか

nao
February 23, 2007 at 3:57 am

コメントとありがとうございます。

kznr1116さんのコメントを読んで、ひとつ思いついたことがあります。
今回の音楽ソフトのグラフィックインタフェースについてですが、もともと楽譜的な音楽の表現に慣れている人は、画面上に表示されるオブジェクトと「デザインの対象」となる音楽をうまく切り分けて考えられるのではないでしょうか。あるいはビジュアルの表現を自分なりに消化/解釈できるといってもいいかも。
一方、僕のように楽譜を通して音楽をとらえることになれてない人間は、画面上のオブジェクトと言うプロセスが、まさにデザインの対象にすり替わってしまいがち。どうでしょう?

shibuya
February 26, 2007 at 7:17 am

渋谷っす。ライブ来てくれてありがとん。
しかしね、カオスと音楽の研究やってるわけじゃないからね。
最終的に面白い音楽ができればいいというのが僕のスタンスなので、現状ではDAWで定着させたほうが僕の場合は有効、という判断で研究のために音楽があるのではなく音楽のために研究があるということです。
んで、現在MPCのようなもので作られてる音楽のほとんどは僕にとってはつまらない。不可視な状態で所詮音楽らしいフォームに落ち着いていくものは単に凡庸に聴こえるだけで。Pan sonicは例外的だけど、それは才能でしょう。

nao
February 26, 2007 at 12:00 pm

コメントありがとうございます! ライブおつかれさまでした。

ちょっと僕の書き方が悪かったかもしれませんね(誤解をまねきそうな部分は直しておきました). 音色の動きが非常に面白かったので、同じような手法でもう少し高次の音楽的構造にもゆらぎをもらせられないだろうか… という趣旨でした。最終的にDAWでフィックスすることに関して、ネガティブな意見を持っている訳では決してありません (現に僕もそうやってますから)。

渋谷さんと池上さんは、ぼくがやりたかったことに近いことに、かなり高いレベルで取り組まれていると勝手ながら思ってます。あともう少しでホントに新しい音楽が生まれるのでは、という期待を込めて(自分のことは棚に上げて) 書かせていただきました。未踏のときにもうすこしつっこんでお話ししておけばよかったですね。今度またゆっくりこの話題をお話しさせてください!

>んで、現在MPCのようなもので作られてる音楽のほとんどは僕にとってはつまらない。不可視な状態で所詮音楽らしいフォームに落ち着いていくものは単に凡庸に聴こえるだけで。Pan sonicは例外的だけど、それは才能でしょう。

ここは同感です! ただ、これも人それぞれだと思います。上にも書きましたが、僕のように音楽的な素養がない人間は、コンピュータの画面に惑わされることがたびたびあります。Pan Sonicのトークショーは、「見えないことの良さ」を再度思い起こさせてくれたという意味で、僕にとっては有益でした。ライブにトークショーと非常によい勉強の機会をありがとうございました!!

shibuya
February 27, 2007 at 6:19 am

高次の音楽的構造というのがそもそもあまりうまくいかないことが多い。
特にそれを急ぐと全体から部分を指向することになって、一見複雑に見える単純なものしか出来上がらない。そういうものはたくさんあるでしょ。
音色が揺らいでるから構造も揺らいでなくちゃいけないということはないし、どちらかと言うとそこで首尾一貫してるのは凡庸だなと思う。
方法が結果を保証するわけではないし、もしそうだとしたら作るに値しないでしょう。
なので全体という思考をやめてあくまでも部分から始めたいというのが僕の気分で、今は音色と動きのみにフォーカスして何が出来るか試していてその中間発表でライブがあったりCDがあったりということです。
次はそれぞれ構造を持ったsound fileの掛け合わせ方とか切断の仕方を考ようかと思っているけど、とはいえ僕は音楽を作って発表するのが仕事なのでそういうプロセスの段階でいくらでも音楽は作れるし、とりあえず形にすることで今やっていることの問題が見えてきたり音楽を作ることを違う角度から考えられるということもある。

可視性の問題について言うと僕自身は楽譜は読み書き出来るけど、コンピュータで作ってるときはあまりそういう意識はない。けど、最近分かったのはある状態からこのトラックを消すとどうなるかとか足すとどうなるかというのは聴かなくても大体分かるということで、そういう違いはあるかもしれないけど、まあ些細だとは思うよ。音階も拍子もMIDIも使ってないし。

nao
March 8, 2007 at 3:37 am

>音色が揺らいでるから構造も揺らいでなくちゃいけないということはないし、どちらかと言うとそこで首尾一貫してるのは凡庸だなと思う。

たしかにそれは分かります.僕は音色よりもやっぱりリズムとか構造を以下にくみ上げて行くか,もっというといかに創発させるかということに興味があります.すごく極端に言うと,909の音色でも使い方がかっこよければいい (ちょっといいすぎですね.実際は音色が大きなウェートを占めることはわかってるんですが..)

たぶん,渋谷さんと僕の言ってることはそんなに違わないような気がしてきました.ただ興味の対象が多少違うということでしょうか!!

今年は芸大でも講義されるんですよね? もぐり込んでもいいですか?? :-) 楽しみにしてます.

mshkysmr (mshkysmr)
August 13, 2010 at 2:07 pm

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それがPan Sonicがコンピュータを使わない理由。[link to post]

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