大統領選挙をビジュアライズ -「ビジュアライジング・データ」 日本語版発売!

ちょっといまさらという気もしますが、先月の最大のニュースは何と言ってもアメリカ大統領選挙でのオバマ候補の勝利ですよね。ちょうどその前後に、“マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選 [DVD]”“告発のとき [DVD]” といったポスト9.11、ポストイラク戦争後の現代アメリカの民主主義の現状についての映画をいくつか見ていたこともあり、あらためてアメリカという国の底力を思い知らされたような気がします。

大統領選挙の結果自体については、僕が詳しく書くまでもないことなので、ここでは省略しますが (President-electという言葉の存在を初めて知った)、選挙後に目にとまったのがNewYorkタイムズのオンライン版に掲載されたこのマップです。

President Map – Election Results 2008 – The New York Timesピクチャ 1.png

County(郡でいいのかな?)ごとに両候補者の投票数の「差」を円で表現しています。例えば、ロサンゼルスやシカゴなどの青い円が大きい郡は、オバマが大差で勝ったということを表しています。左側のスライダーで過去の選挙を選ぶと、円の直径がスムーズに変化し、今回の選挙の結果を過去の選挙と簡単に比較することができます。この図を一見するだけで、中西部と南部で共和党が強いこと、今回マケイン候補がとった州でも民主党が票をのばしていることが見て取れます。さらに地図をクリックすることで州ごとの結果を拡大してみると、やはり大都市圏でオバマ氏が強いこと、逆に南部の田舎のような特に保守的な地域では実はマケイン氏が得票を伸ばしていることなどが分かります。

僕自身がこの地図を見て、最初に思い出したのがこの図です。“Visualizing Data” の第三章で、データのマッピングの例として、Ben Fryが紹介したサンプルのプログラムです。(Processing.jsバージョンがこちらにあります。Firefoxのみで動作するようなので注意してください)

ピクチャ 3.png

似てませんか? 大きさをスムーズに変化させられるところもそっくり。色使いまで、共和党の赤と民主党の青にあわせたかのようです。ストレートなマッピング方式なので似てくるのは当然として…
シンプルな方法でも、実際のデータをビジュアライズすることで、複雑な事象を直感的に分かりやすく伝えられることを改めて強く印象づけられました。

このBen Fryの「Visualizing Data」の日本語訳がとうとう発売されました!


“ビジュアライジング・データ ―Processingによる情報視覚化手法” (Ben Fry)

監訳者がなんとあの「富豪家」の増井俊之さん(Apple)  (WWDCの際にはお世話になりました > 増井さん)、さらにはProcessing本などで有名な前川さんや田中さんも翻訳に関わっていたという豪華な顔ぶれです。

この本に関しては、以前に英語版を紹介しました。

Blog Archive » 情報の可視化 – Ben Fry プレゼンテーション

情報デザインの本にありがちな概念のみをつらつらと書き連ねた本とは異なり、読んだ人がすぐに使えるテクニックが満載。Processingの実際のコードも多数掲載している。特にデータ間の補完のテクニックなどは、え、そんなに簡単な方法なんだ!と目から鱗が落ちた。

日本語に翻訳されたということで読みやすくなったのは当然のことですが、それ以外にもProcessingの代わりにActionScriptを使った情報視覚化のテクニック集が付録として追加されています。「すぐに使えるテクニックが満載」と書いた通り、この本を読むと、自分でも何かやってみたいという気になります。

実際、僕がこの本を読んだ後につくったのはこんなサービスです。

“Faces of the day – きょうの顔”
http://facesoftheday.jp/

Processingで作ったサービスで、その日、話題になった人の顔をタイル状に並べて表示するというものです。

たとえば、2008年11月30日の顔はこんなかんじ。

ピクチャ 7.png

このサービスを作るにあたって、多用したのがこの本で紹介されているデータの補完の技術。技術というのも大げさなくらいの単純なクラスですが、スムーズな視点の移動などは、まさにこの本で紹介されているものをそのまま利用させていただきました。次に作ったMassh!でも同じクラスを多用しています。


08.03.06 Mashup.App Prototype#3 from pelican on Vimeo.

その他にも、ズーミングの効果的な実装法など、Processingを用いたプログラミングの実践的な部分で本当にお世話になった一冊です。Processing環境の利点を生かして、インタラクティブにデータを見せる方法にもフォーカスがあたっている点が、この本の大きな特徴の一つだと思います。”Interacting with Data”とか、”Making Data Interactive”が隠れたテーマになっているといえます。そういう意味では、原書の副題”Exploring and Explaining Data with the Processing Environment”のExploringというニュアンスが、日本語版の副題だと消えてしまっているのがちょっと残念です。

改めて日本語版をぱらぱらとみて、また自分でもなにかやってみたいなという気になってきます! ここは来る総選挙をにらんで、自民党、民主党のここ最近の選挙での得票数を市町村ごとに…. などと考えても、気分的にどうも盛り上がりません。なにか政治に関するものを作ってみたいとは前々から思っているのですが….   どうせどっちが勝っても「Change」は来ないし…   いかんいかん、こういう否定的な気分を吹き飛ばすためにも、あなたもこの本を買って、情報視覚化技術をばりバリ使って、選挙を日本を盛り上げよう!!

「Yes, you can」

ああ、むなし….

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ps. 上記の大統領選挙のアプリは、Ben Fry自身も紹介してました!writing | ben fry » Change is always most interesting

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