「The Latent Future -潜在する未来-」 ICC OpenSpace 2017にて展示中.
2017年5月27日より、ICC OpenSpace 2017 未来の再創造 にて、Qosmoの新作展示がスタートしました。
「The Latent Future – 潜在する未来」と題した本作は、ニュース記事しか知らないコンピュータが、この世界の「ありえたかもしれない過去、ありえるかもしれない未来」を夢想し続ける…という作品です。
http://www.ntticc.or.jp/ja/archive/works/the-latent-future/
映像の中の3D空間には,過去に実際に起きたニュースのほかに,無限に近いさまざまな文章が埋め込まれています.その現実のニュースから「ありえた/ありえる」かもしれないニュースが生成されます.
この作品は,言語モデルの中に畳み込まれた,無限に近い文章の組み合わせ可能性に着目し,現在インターネット環境などに顕著に表れている,真実と虚構とがないまぜになってしまう現実社会の脆さを考えようとするものです.過去の大量のニュースを学習した人工知能(AI)は,Twitterからのニュースフィードを常に受け入れ,ニューラル・ネットワークの中に埋め込まれた「すでにある」,しかし「まだ起きていない」,オルタナティヴなもうひとつのニュースを生成し,提示し続けます.そこには,ホルヘ゠ルイス・ボルヘスの小説「バベルの図書館」に登場する,表現可能な全ての組合せを収めた図書館のごとく,組み合わせにより生成された大量の架空のニュースが含まれ,虚構と事実の間に揺らぎをもたらします.
表示されている3D空間は,各文章が持つ高次元の特徴ベクトル(文章の特徴を数列に変換したもの)を,3次元でマッピングしたもので,空間内での距離が文章間のセマンティック(意味的)な距離に対応しています.
作品のアイデアは言語モデル自体の面白さから着想しました。
単なる数字の列 (といっても2000次元以上のベクトルですが)から、無限に近い多様な文章が生みだされるということに美しさを感じました。この高次元のベクトル空間(ちなみにこの空間のことをLatent Space, 特徴量のことをLatent Featuresと呼びます)に埋まっている文章、「すでにそこにあるのに、まだない」記事を、日々流れてくるニュースの見出しを手がかりに、掘り起こしていく…
ボルヘスの「バベルの図書館」(アルファベットの可能な組み合わせの本がすべて所蔵されている)の中を探索するようなイメージでしょうか。
そんな僕の漠然としたイメージを、昨年からQosmoに加わった堂園翔矢が見事なグラフィックにしてくれました。 インターンの二人の大学生 Robin Jungersと 梶原 侑馬 のサポートも不可欠でした. さらにサウンドは、2004年のICCでの初めての展示の時もいっしょだった 澤井妙治にお願いしました。
技術的なデモはこちらを見ていただくとわかりやすいかもしれません。今回つかったモデルとは違いますが、トランプ大統領の発言を四隅においてその間の文章を生成しています。このベクトル空間(latent space)を使って、言葉の”モーフィング”をしていると考えてください。
http://www.naotokui.net/upload/tsne_js/test.html
このLatent Spaceの特徴については、たとえばGoogleのこのblogなどが参考になります。言語を超えて、同じ内容の文章がこの空間の中ですぐ近くに位置されるというものです。
同様にこちらのデモでは画像のキャプションの文章を分類しています。同じような内容の文章が近くにプロットされているのがわかるかと思います。今回の展示で表示されている各点 (= ニュースの見出し)は、この空間が3次元になったものと思っていただいてまちがいないです。
http://www.naotokui.net/upload/tsne_js/tsne_captions.html
思い返せば… 1997年.
オープンしたてのICCで、Karl Simsの”Galapagos“という人工生命の考え方に基づく作品に衝撃を受けたのを今もはっきり覚えてます。ちょうど大学3年生で研究室を決めるタイミングだった僕は、人工生命・人工知能の研究をしている研究室を迷わず選びました。それから20年(やばい…歳とるわけだ) 。この節目の年にICCで展示ができて本当に嬉しいです。機会をくださった畠中さんをはじめ、ICCのみなさま、ありがとうございました!
来年3月までやっていますので、新宿・初台にお越しの際はぜひ見に行ってみてください。面白い歴史が掘り起こされる瞬間に出会えるかもしれません! 英語にも近日中に対応する予定です。
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