[日誌] AI DJプロジェクト — ヨーロッパツアー

Photo: (c) David Gallard – Scopitone 2017

2015年から続けているAI DJプロジェクトが、ヨーロッパのフェスティバルに招待を受け、9月中旬の約二週間、ヨーロッパを旅してきました。

AI DJプロジェクトは、人間のDJと機械学習に基づく「AI DJ」が一曲づつかけあう、Back to Backと呼ばれるスタイルでDJを行うという実験的なDJセット。リアルな昔ながらのレコードとターンテーブル(カスタムされてます)を使うというのがキモで、現在はレコードの選曲とターンテーブルのスピードをコントロールしてのビート合わせの部分に、Deep Learningの技術が使われています (くわしくはこちら)。

今回、ビジュアルを担当する堂園翔矢(Qosmo)とTASKOさんに作っていただいた小型ロボットとともに、まわったフェスは次の二つです.

  1. Speculum Artium (スロベニア、トルボヴリェ)

2. Scopitone 2017 (フランス、ナント)

1. Speculum Artium — Slovenia

Speculum Artium – 会場になった街

最初に向かったSpeculum Artiumは、スロベニアのトルボヴリェという山間の町で行われているメディアアートフェス. 行ってみて驚いたのは、人口2万人弱の山の中の本当に小さな炭鉱町だということ。だれもここでメディアアートの祭典をやっているとは思わないような場所です。ラピュタにでてくるパズーの村というのが第一印象でした。

SPECULUM ARTIUM — ユニコーンが今年のシンボル

来年で10周年という比較的新しいフェスですが、アルスエレクトロニカを手本とし、すたれてしまった炭鉱に変わる新しい町の目玉として力を入れているそうです. 会場は町の中心にある市民文化センターのような建物で、地下室も含めたさまざまな部屋に作品が展示されています.

自分たちの出番は開会式直後. スーツを着た町のお偉いさんという方々が多かったせいか、どうも雰囲気が硬く… かなり苦戦しました。あとで一番目の前で踊ってくれていた、地元の大学生に聞いたところ、「この地域にはクラブというものがなく、テクノなどのダンスミュージック好きがほとんどいない」とのこと… 反応が固かったはずです。

AI DJ Project in Slovenia

 

スロベニアの国営放送が取材に来ていて、番組になっていました。僕もインタビューに応える形でちょこっと出演してます。フェスティバルの雰囲気がよくわかるので、ぜひごらんください。

展示されていたさまざまな作品 / パフォーマンス

2. Berlin

次の目的地はベルリン.

ナントの出番の前に数日間間が空いたので、友人に会いに久しぶりにベルリンに向かいました。僕の記憶が正しければ2006年以来のベルリンです. 10年ぶりに訪れた街は大きくかわっていました。街が以前よりも整備され明るい印象です。街中でもいたるところから英語が聞こえてきて、以前以上にインターナショナルな街になったように感じました。

三日ほどの滞在でさまざまな人に会うことができました. 古い友達のArt+ComのJussiや、以前からネット上でやりとりさせてもらってたSamim氏。Deep Learningのアートへの応用で知られるアーティスト、Gene Kogan氏、Marcel Schwittlick氏のお二人。ベルリンベースで活動しているアーティスト、的場寛さんなど、初めての方も久しぶりの方もたくさんの人にあえた三日間。

GeneとMarcel、的場さんが席を置いている Lacuna Labというシェアオフィス?にもお邪魔しましたが、サイエンティスト、アーティスト、ミュージシャンがとなりあって作業するすごく刺激的な環境でした。日本にもおなじような掛け声で作られた組織はあるとは思うのですが、この場所ほどオーガニックに機能していないように感じます。

そしてほんとに古くからの仲間、Sine Wave Orchestraの石田くん、サウンドアーテイストの牧野豊くんとのまさにリユニオン。

左から 牧野くん、僕、石田くん

ベルリンはアートウィークの最中ということもあり、さまざまな展示を見ることもでき、非常に密度の濃い三日間でした. (現地でライターとして活動している日比野沙希さん、ミュージシャンのmergrimくん、お二人にお世話になりました.)

左) Carsten Nicolaiのライブ 右) Berlin Art Weekで見かけたpublic art
 
Berlin Art Week

3. Scopitone — Nantes, France

Scopitone Festival — map

そして最後の目的地、Scopitoneフェスティバルへ. 毎年この時期に行われているアートと音楽の祭典. Speculumとは規模が大きく異なり、ナントの町中のたくさんの会場に作品が点在しています。その会場も中世のお城や教会の中だったり、この夏に新しくできたばかりのメディアセンターの中だったり、すこし郊外の大学だったりと多様で、街中を走るトラムに乗ってそれぞれの会場をまわりつつ、ナントという街にすこしずつ詳しくなっていく感じも楽しかったです。

 

こちらのフェスティバルでも、僕たちの出番はオープニングセレモニー直後で、開場前には長蛇の列ができていたそうです。

パフォーマンス自体はいままでで一番自分の思い描いている姿に近いものができました。僕の選曲に対して、AIが思いもしなかった選曲できっちりつなげてくれた時には、観客から歓声があがりました。(鳥肌モノ!) 僕が選曲をミスったせいで、客の動きをとめてしまったのを感じた瞬間もあったのですが、次のターンのAIが完璧な選曲とミックスで見事に挽回してくれました. 最後にはブラボーの声ももらえたので満足. 会期中に何度か、「パフォーマンス、すごく面白かったよ」と話しかけたりする場面も。暖かいフランスのオーディエンスに感謝です。

AI DJ at Scopitone Festival  – Photo (c) David Gallard – Scopitone 2017

次の日には、アーティストトークもありました. 別の会場でインスタレーション作品を展示している菅野創くん (ベルリンでも会っていたのですが)の素晴らしい発表のあとでしたが、15分ほど今回のプロジェクトにかける気持ちを話させてもらいました。

アーティスト・トーク — 右は菅野創くん

夜の音楽フェスのほうもすこしだけ顔を出して来ましたが、日本でいうとWIREとかのちょっと小さいバージョンという感じでしょうか。大学生くらいのカップルから、50代くらいのグループまで幅広い年代の人たちが音楽とダンスを楽しんでいる様子は、日本にはない雰囲気で羨ましく思いました。個人的にはFloating PointsからMotor City Drum Ensembleの流れが最高でした。

菅野くん + yang02くんの展示
Scopitoneで見たさまざまな展示

ナント自体、初めてだったのですが、きれいで住みやすそうな街でした。海が近いこともあって魚介がおいしかったのが印象に残っています (市場で生牡蠣とテリーヌを買って、堂園くん、菅野くんと近所の川べりで食べたのがよい思い出!)


とほとんど単なる日記のようになってしまいましたが、今回のヨーロッパツアー、これにて無事終了です.

自分以外の何者か、すくなくとも生物ではない別の知性とのコラボレーションがうまくいった瞬間のゾクゾクする感じを味わえるかぎり、そしてそれが観ている側にも伝わっているのを感じられるかぎりは、このプロジェクトを続けていこうと思います。

もちろんまだまだ問題は山積しています。ミックスは完璧にはほどとおいですし、選曲もたまにとんでもない曲を突っ込んできたりします. 最大の課題としては、選曲の良し悪しをフィードバックする仕組みがない点が挙げられます。

選曲の良し悪し ≒ お客さんの反応を定量化する新しい方法を模索します。たとえば、最近、OpenPoseのような普通のWebカメラの映像から、人の骨格の情報を推定するような技術が出て来ています。こうした技術を転用すれば、お客さんがどのくらい踊っているかを数字に変換することができるのではないでしょうか。観客側にむけたカメラの映像を解析し、骨格の情報を抽出、時間的な変化を計測するイメージです (観客側が暗すぎるのではという問題はありますが…)。 次の動画は今年の2月くらいにやっていたテストです.

骨格抽出と画像検索を組み合わせたテスト — 同じ姿勢をしているアスリートの写真を検索しています

また、何が起きているのかということをわかりやすく可視化するという点でもまだまだ改良の価値があると感じています。AI DJが今何をしているかというプロセスを示すために、たとえばARは使えないでしょうか. AI DJ目線として、Go Proカメラを導入していますが、もう一歩進めて、AI DJ自身がかけている曲の情報やEQ、ボリュームなどのミキサーの操作の情報などをAR的にカメラ映像にオーバーレイしてはどうでしょうか。iOS 11で導入されたARKitが有益なツールになりそうです.

と、いろいろとやりたいことはたくさんありますが… すこしずつアップデートしていきたいと思います。


8月の合宿と夏フェスへの参加を通して、プロジェクトのブラッシュアップ、さらにはカスタムメイドのターンテーブルの制作にもご尽力いただいたYCAMのみなさま。ロボットを作ってくれたTASKOさん。Scopitoneに参加するきっかけをくれたアンスティチュフランセのみなさま (とくにSamsonさん) に感謝します。

現地には参加できなかったのですが、もろもろのヨーロッパとのやり取りは、Qosmoの細井さんが担当してくれました。彼女にも感謝します。

引き続き、本プロジェクトをよろしくお願いいたします!

 

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