セビリア滞在中. フラメンコ×人工知能 – イスラエル・ガルバンの公演に向けて.

来年1月の公演に向けて、YCAMさんを中心に取り組んでいるフラメンコ × テクノロジーのプロジェクトのために、スペインはセビリアに滞在中.

フラメンコの踊り手は、フラメンコ界の革命児、イスラエル・ガルバン氏。旧来の僕たちがイメージするフラメンコとは大きく異なる、モダンダンスやバレーの世界にも通じる世界観を持っています。

「自分の分身と踊りたい」「ドンキホーテにとってのサンチョ・パンサのような、相棒・手下が欲しい」という氏の思いにこたえるかたちで、YCAMから参加を要請されたのが昨年末。彼のステップを元にしたダンスのモデルを構築しようとしています。「自分じゃない自分とDJをしたい」という思いからスタートし、年末にYCAMでも公演を行った自分のAI DJプロジェクトと共通項が多かったためです。

当初は「フラメンコ?」「何故自分が?」という思いも強かったのですが、まず最初にイスラエルに言われたのは、フラメンコは音楽なのだということでした。妖艶な?上半身と手の動きのイメージを強く持っていたのですが、イスラエルに言わせると、フラメンコの肝はなんといってもサパテアード (タップダンスのような足のリズム)なのだそうです。サパテアードとパルマ(手拍子)がリズムだとしたら、手の動きは視覚的なメロディー。それらの踊りとギターと歌を統合した総合的な音楽として、感情を伝えるのがフラメンコだと。技術的には音楽生成プロジェクトという観点で捉えればよいのだ、ということがわかってからは、自分の作業の方向性がクリアになりました。

とはいえ、一般的な音楽とは違い、学習に使えるようなデータが全くありません。そこで、YCAMで開発したセンサーを埋め込んだブーツでリズムのパターンを取得するところからはじめることになります。

今回のセビリア滞在の目的は二つ。このブーツをイスラエルのもとに届け、データを収集できる環境をセットアップすることと、公演の全体の方向性をまとめあげていくことでした。

無事にこれらのタスクを終えてこれから帰国の途につきます。あとはイスラエル本人が靴を履いてデータを集めてくれることを祈るところです。 データが集まったところから、本当の自分の仕事がはじまるわけなのですが…  こうしたかたちで、舞台芸術のいわゆるクリエーションに参加するのは僕も初めての経験で、とまどうことが多いのですが、ひとつひとつ楽しみながらやれればと思っています。

滞在中のオフの時間は、フラメンコの文化をより深く理解するために、セビリアの街を歩いたり、ショーを見に行ったりもしました。フラメンコのショーもそれはそれで良かったのですが、何よりも一番感動したのは街中の居酒屋? バーのようなところで自然発生的に歌と踊りの輪がうまれている場面に遭遇したことです。下の動画のかっこいいおじさんが歌い終わった途端、自分の前で立って聞いてた20歳前の女の子が前に出て踊り出します。その前には70歳前後とおぼしきおばあさんが自慢ののどを聞かせてくれました。

これだけしっかり根付いている伝統的なフラメンコの世界に、全く新しい価値観を持ち込もうとすることがいかに難しいことか… (実際 イスラエルのWikipediaなどを見ると”controversial” (=論争を呼ぶ)という言葉が頻出しているのがわかります)   逆説的ですが、それを肌で感じられたことが今回の旅の一つの収穫かもしれません。遠い存在だったイスラエルを、前よりも自分の活動に引きつけて考えることができるようになった気がします。