Princeton Soundlab

2006 BLOG

Perry Cookが率いる プリンストン大学のSoundLabがやばい。Perry Cockといえば、“Music, Cognition, And Computerized Sound: An Introduction to Psychoacoustics” や、“Real Sound Synthesis for Interactive Applications”などの著作で知られるコンピュータミュージックの大家だが、彼の研究室がこんなに面白いことになっているとは知らなかった。

SoundLabのプロジェクトのいくつかを紹介すると


1. Chuck
ライブコーディング用のプログラミング言語。ライブコーディングとは、パフォーマーがリアルタイムにプログラミングを行うことで音楽のライブを行うこと。再生中に”on-the-fly”でプログラム自体を書き換えられる点で、他の音楽用プログラミング言語 (CSoundやSuperColliderなど)とは異なる。
(ライブコーディングについて調べていて、久保田さんがライブコーディングをしているSFCの授業を発見!コードジョッキーという呼び方が新鮮。この辺も交えてまたライブコーディングについては改めて書くことにする。ライブコーディングとは無関係だが、菊地成孔さんの授業も見れるようだ。)

2. Audicle
Chuckのための統合開発環境とでもいうべきもの。3Dな可視化ソフトなどもある。

3. TAPESTREA
環境音などを録音した音声ファイルを解析し、その中から特徴的な音をとりだし、それらの”サウンドオブジェクト”を組み合わせて、全く新しい音風景を生み出す。ゲームやマルチメディアコンテンツなどの用途を想定している。
最近の音楽テクノロジー研究の一つの流れとして、すでにある音声ファイル、音楽ファイルの再利用というのがある。iPodやiTunesなどでデジタル情報として音楽を保存/利用することが一般的になり、それにともなって音楽情報検索Music Information Retrievalの研究が進んでいることが大きな要因であろう。これらの研究の面白いところは、単に音楽を整理し、利用しやすい形で提供することにとどまらず、新しい音楽コンテンツ自体を既存のデータから生成しようと試みていることにある。音響合成の技術があらかたでつくした感があることも、こうした流れを強める結果となっているのだろうか。
この”Database Music”とでもいうべき音楽については、TAPESTREA以外の研究プロジェクトを紹介しつつ、いずれまとめたいと思っている。

4. 音楽インタフェース
新しい電子楽器類。

5. 上記のソフトウェア/楽器を使ったライブパフォーマンスや音楽作品

それぞれ研究対象は様々だが、いいポイントをついているように思う。全体を通して、研究室の中での各プロジェクトの相互作用が自発的に発生してきているように見受けられる。SoundLabは今後注目に値するグループである。